News Scrap

第3回 K2オープンセミナー『ブルーテックが変える日本の海』開催報告

2024.03.18
Peatix20240229.png

2024年2月29日(木) 第3回K2オープンセミナーが開催されました。
今回のテーマは「ブルーテック(Blue Technology)」
ブルーテックとは、海洋分野での先端デジタル技術のことで、海洋環境が大きく変化するなか、様々な課題を解決する技術として活用が期待されています。とはいえ、陸上や空中で活用される技術に比べると、海洋分野のデジタル化は遅れをとっているのも事実です。

本セミナーでは、海洋分野におけるデジタル活用の研究や現場で活躍する3名の有識者の方々を講師にお招きし、現在の技術的な取り組みの状況や課題、そして産業振興や地域課題解決についての講演と意見交換がなされました。

image-001b.png

はじめに慶應義塾大学の古谷知之教授から開会の挨拶として、本セミナーの開催主旨とブルーテックの可能性について言及されました。具体例として、水上・水中ドローンやAI技術などの活用で、海洋上風力発電施設をはじめとするインフラの点検、CO2吸収源としてブルーカーボンを活用するのに役立つといった事を挙げられ、世の中に大きなインパクトを与えるポテンシャルがあることを示唆しました。



『水上・水中モビリティ開発の現状』

第一部では、東京海洋大学の清水悦郎教授から「水上・水中モビリティ開発の現状」をテーマにプレゼンテーションがなされ、インフラ維持管理、海洋調査といった研究や水産業において資金面や研究環境の困難性から担い手が不足していること、また自律型無人潜水機や有線水中ドローンといった様々な種類のモビリティを目的に合わせて使い分ける事で、担い手不足の解消に期待が高まっている現状を説明いただきました。
機器に求められる高い性能や、海中では電波が伝わらないといった問題から、陸上や空中に比べ水中のモビリティ開発が遅れている現状を伝えつつも、ビジネスモデルを見つけることができれば、大きなチャンスがあることを強く示唆しました。

image-003.jpg


『静岡県が取り組むマリンオープンイノベーションプロジェクト』

第二部は、一般財団法人 マリンオープンイノベーション機構 専務理事兼事務局長の渡邉眞一郎氏が「静岡県が取り組むマリンオープンイノベーションプロジェクト」を紹介。本プロジェクトは、海洋資源を活用した産業の振興と、海洋環境の保全の世界的な拠点形成を目的としており、中心となるMaOI機構は2019年7月に静岡県の全額出資で設立され、「海洋研究の推進」「ブルーエコノミーの推進」「海に関わる人・団体の連携促進」という3つの活動を推進。産業の支援機関でありながら、自ら研究を行うための研究施設や、海洋微生物と駿河湾の海洋観測のデータを集約したデータプラットフォームを有しているユニークさを持つ同機構は、バイオ研究の専門家やコーディネーターが伴走支援する体制も整えており、支援を受ける企業からの高い評価を得ています。 渡邉氏は、MaOI機構が数多くの地元企業からの信頼を得ているポイントについては 「相談窓口がわかりにくい行政との仲立ちを行うこと」 「技術を実証するフィールドを提供すること」 「支援組織や研究機関の紹介をワンストップで紹介できること」 といった点をカバーしている事を挙げています。

image-00.jpg


来る2024年7月17日(水)、18日(木)には、駿河湾でブルーエコノミーをテーマにしたEXPOの開催を予定している事も発表されました。



開催時期 : 2024年7月17日(水)18日(木)
海洋経済(ブルーエコノミー)に関する国際会議と多種多様な海洋産業が一同に集まる展示会を静岡の清水港で同時開催予定です。



『ヨコスカ・ブルーテックコンソーシアム』

第三部では株式会社フルトン 代表取締役の伊藤和德氏が、横須賀市の掲げる海洋都市構想を推進すべく設立された、「ヨコスカ・ブルーテックコンソーシアム」の活動を紹介。海洋分野の人材育成や市内事業者へのドローン利活用促進などの活動のほか、海洋分野における最先端の技術動向として2023年1月に開催した「ヨコスカブルーテック・シンポジウム」や、同年2月に実施した水中ドローンの体験会などの報告もされました。 磯焼けにより焼失しつつある藻場を再生することで、減少傾向にある漁獲高を増加させるとともにブルーカーボンの定量化に寄与すること、また未来を担う海洋人材の育成を目指し、人材増強に関する教育プログラムの実施や、ブルーテックの普及啓発活動といった取り組みを進めていく方針を力強く説明されました。

image-004.jpg


講師の方々による座談会

zadan3.png

セミナーの最後には登壇者全員による座談会を開催。古谷教授が司会をつとめ、「それぞれがブルーテックに関する取り組みを行ってきた中で直面した課題」や「海洋人材育成に対する見解」「ブルーテックやブルーエコノミーという言葉の使い方」など、様々なテーマで議論が繰り広げられました。 清水教授は、「海洋の研究は資金も時間もかかります。そこを社会が理解し、受け入れる機運の醸成が必要です」と指摘。そのためにもブルーテックの取り組みを啓蒙することが求められると語られました。 また渡邊氏は「ブルーテック市場の拡大は、技術先行ではなくマーケットインという視点をもって、ビジネスを進めることが重要」とのことでした。 伊藤氏は「私たちは、まずファンを獲得する取り組みから進めています。その1つが水中ドローンを使った釣り体験で、市場規模が大きな釣りの領域から広めていくという考えです。このような取り組みを進めていくことで、市場を創り国内で水中ドローンの部品を生産できるような状況にしていかないと、非常に安価な中国産ドローンばかりが市場を席巻している現状において、世界的競争では勝てないでしょう。」と、まずはエンターテインメントの要素を取り入れながら需要を喚起し、ブルーテックの国内市場を醸成することが必要だという見解を示しました。



約2時間に渡る本セミナーの参加者は200名を超え、質疑応答の時間も余すことなく多くの方から質問が寄せられ、大盛況のセミナーとなりました。

ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
今後のイベント案内も随時ホームページで紹介していきます。
次回セミナーもぜひご参加ください!

メニュー