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慶應義塾大学が国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)令和4年度Beyond 5G研究開発促進事業 委託研究に採択

2022.11.22

-研究開発課題「エラーフリーPOF による革新的通信システムの開発」-

 学校法人慶應義塾は、慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート(KPRI)の小池康博教授を代表研究責任者として提案した「エラーフリーPOF による革新的通信システムの開発」が、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)より公募された「Beyond 5G研究開発促進事業(一般型) Beyond 5G 機能実現型プログラム」に採択され、2022年度より研究開発を開始しました。 令和2年6月、総務省から公表された「Beyond 5G 推進戦略 -6Gへのロードマップ」において、2030年頃のBeyond 5G導入までの取組のうち、前半5年の「先行的取組フェーズ」で我が国の強みを最大限に活かした集中的取組を実施することとしています。NICT Beyond 5G 研究開発促進事業は、Beyond 5G の実現に必要な要素技術について、民間企業や大学等への公募型研究開発を実施し、事業化を目的とした要素技術の確立や、国際標準への反映等を通じて、Beyond 5G における我が国の国際競争力強化等を図ることを目指し、実施されています。 今回採択された研究開発課題「エラーフリーPOF による革新的通信システムの開発」は、Beyond 5G 時代において大容量、省電力、低遅延のデータ通信を実現する革新的エラーフリーPOF(プラスチック光ファイバー)伝送システムを開発することを目的としています。2022年度の契約総額は約5億円/年であり、今後2025年度までに、Beyond 5G実現に必要な要素技術としてその確立を目指します。

【研究開発の概要】
代表研究責任者の小池康博らの研究グループは、短距離用途の光ケーブルとして、フレキシブルかつ安全でギガビットをはるかに超える高速通信が可能な屈折率分布型プラスチック光ファイバー(GI型POF)を提案してきました。GI 型 POF の発明は、長年の懸案であったいわゆるラスト・ワン・マイルの有力な候補として、極めて大きな注目を浴びています。2021 年 9 月、慶應義塾よりエラーフリーPOF についてプレスリリースされ、今までの通信システムの在り方を大きく変える可能性があることが報告されました。このエラーフリーPOF は、データセンター、車、医療等の短距離通信で課題となっている通信エラーをほとんど発現しないプラスチック光ファイバーです。代表研究責任者らの研究グループは、このエラーフリーPOF を用いることによって、データセンター通信の次世代標準である PAM4(Four-level Pulse Amplitude Modulation)方式 による毎秒 53 ギガビットの信号を、現状必要な誤り訂正機能を用いることなく、エラーフリーで伝送することに成功しました。本成果は、プレスリリースと同時に、NHK ニュース、日本経済新聞にも大きく取り上げられました。

近年、AI、IoT 時代の到来によりサーバーやコンピュータ機器において大容量かつ高品質のデータ通信が求められていますが、信号の高速化に伴ってデータを誤りなく伝送することが困難となってきています。現行の多くの通信システムでは、伝送時に生じる誤データを補正するために FEC(Forward Error Correction)に代表される誤り訂正機能や波形整形回路が用いられていますが、これらの信号処理によって通信システムの消費電力や通信遅延が増大することが大きな問題となっています。エラーフリーPOF は、上記の通信システムにおける誤り訂正機能や波形整形回路を不要とするものであり、通信システムの発熱、遅延、コストの問題を一気に解決することができます。

今回採択された研究開発課題「エラーフリーPOF による革新的通信システムの開発」では、エラーフリーPOFにより、データセンター通信の最新標準である1レーン50 Gbps以上のデータ通信を、現在必要とされているFEC等の誤り訂正機能を用いずに実現する通信技術の確立を目指します。このエラーフリーPOF伝送システムは、データセンターの省電力化のみならず、自動車、医療、ロボティクス等、大容量リアルタイム通信が必要となる次世代情報産業のコアテクノロジーとなることが期待されています。 慶應義塾大学は、Beyond 5G における我が国の国際競争力強化に貢献できるよう、本研究開発を鋭意推進してまいります。


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