1981年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了(工学博士)。1980年4月より慶應義塾大学工学部応用化学科助手。1986年~1987年、米国ロードアイランド大学海洋学大学院へ留学。帰国後、専任講師、助教授を経て、1998年より同大学理工学部応用化学科教授。
主な著書に、「首都圏における酸性雨のネットワーク観測」(慶應義塾大学出版会)、「続・身近な地球環境問題―酸性雨を考える」(コロナ社)、「環境と化学 グリーンケミストリー入門」(東京化学同人)等。
室内空気汚染への社会的関心の高まりから、現在、多数の空気清浄技術の研究が行われています。しかし、問題の重要性に比較して、その多くの技術は、既存の化学フィルター法、活性炭等の吸着剤による除去技術を単に転用したものが多く、実際に有害ガスの除去能力や処理量が充分とは言えません。 一方、当環境化学研究室で開発してきました“拡散スクラバー法”は、ガスの拡散を利用したガスの捕集法であり、例えば、多孔質テフロン(PPTFE,Poruous Poly Tetra Flouro Ethylene)製チューブに空気を流すと空気中のガス成分は拡散し、PPTFEチューブ内壁の孔を透過します。PPTFEチューブの外側にガスを吸収する水等を配置しておけば、そのままガス成分を吸収することができます。また、空気中の粒子は、ガスと異なり拡散係数が小さいので、そのまま空気の流れと共にPPTFEチューブを通過します。従いまして、シンプルなPPTFEチューブを用いるだけで、粒子と分別して、空気中のガス成分のみを捕集することができる画期的なガスの捕集法と言えます。
“拡散スクラバー法”によるガス成分の捕集の研究は、主に、環境計測技術として展開して参りましたが、さらに、“拡散スクラバー法”を用いた有害ガス除去処理技術を応用した新しい空気清浄技術の実用化を目指して、ここ数年来、研究をすすめてきました。その研究成果が認められ、平成13年度の「環境賞」優良賞(日立環境財団、日刊工業新聞主催、環境省後援)を受賞しました。また、平成14年から3ヵ年の計画で、文部科学省・大学発ベンチャー創出事業である“快適環境を創造する室内空気汚染物質の高性能浄化装置の開発”の研究プロジェクトが開始されました。その研究成果を基に、平成17年4月に慶應義塾大学発・研究開発型ベンチャー企業として株式会社STAC(Standard Technology for Air Cleaning)が設立されました。今後、住宅、ビル、トイレ、病院、美術館、クリーンルーム、動物飼育舎等の様々な生活・生産の室内環境において、拡散スクラバー法による空気清浄技術が、国内外で広く利用され普及することが期待でき、私どもの研究開発が社会に貢献できるのではないかと考えています。
